Naegi

逍遥

たわごと

社会人になると本が読めなくなるという本を、昼休みに読む。皮肉なことだ。私は意地でも本を読んでやる、という気持ちで本を読んでいる。大学生の時は、読書によって痛みが引き起こされていたが―言い換えれば読書は鍛錬の一部であったが―社会人になってから…

灰色の春

去る時は早く去りたい一心だったのに、すでに関西が恋しい。阪急の接近音を聞く。なんて、ロマンティックなのだろう。関西で6年間過ごせたことは、幸福だった。新しい街は、プレーンで味気のない街だ。関東全体、というと嘘になるが、やはり山が見えないと落…

日々の労働と、美術

いざ組織の中に入って、意思伝達を行おうとしてもうまく行かない。 肩の力が入ってしまって、妙な文章になる。 私はこの前の記事で、組織の規範や慣例を「文法」という言葉で言い表したけれど、まさに私は「文法」を習得中で、同じ部署の人にメッセージを送…

雪の枝

ちょうど一週間前、友人たちと京都へ出かけた。 一週間でこれほどまでに世界はドラスティックに変わるのか…という驚き。私は、言語の使用の面から、全て「社会人」的なものへの変更を迫られている。絶対に、こうしたものから逃れてやる、と決意していたもの…

雲をつかむ

椿。 ついに労働者となった。私は組織のコマに過ぎない。ジェーン・スーの生活は踊る、を聴いている。組織で働くということは、私という自我を潜めることなのだ、と合点がいく。 今までは自我が全てだった、みたいなところがある。自我を潜めることはできる…

学生からの卒業

重い腰を上げて、学生時代の振り返りを書こう。この6年間は濃密で、一言で集約することなどできないから。車窓を見れば、菜の花が咲き乱れていた。春にも、魔物がいる。霞に唆されて、花たちが一斉に咲き出したのだろう。こうした気候と、環境の変化にどうか…

針葉樹

一ヶ月ぶり。 再び北海道に行ったので、近いうちに旅行記を書く。 引越しの荷造りするなかで、過去を顧みる。 荷物は自分の生きた証だ。 根本的に整理整頓が苦手で、小学2年生の時に「整理整頓を上手くできるようになりたい」という作文を書いていたくらいだ…

正論のストレートパンチ

正論だけでは世界を救えないよね〜。マクドナルドで女子高校生が言ってたよ。嘘松だよ〜。 日々に忙殺されると、正論ばかりが脳裏に浮かぶので困る。確かにタイトなスケジュールに生きると、正論で物事をぶった斬るのが妥当なんだよな。少しでも温情をかけよ…

居場所を移すということ

あのね、という走り出しで走ろうとすると、なぜか調子が出ない。あのね!という接頭辞(?)は使い古されていて、あまり好きではない。が、話すときは無意識にあのね、と使ってしまうらしい。じゃあ、今回も「あのね」で始めるとするか…。話すように歌う(J.…

2024

年が明けた。修論を出して郷里に帰って、また戻った。この土地での暮らしも、もうすぐ終わる。6年住むことになるなんて思いもしなかった。長い。 地元から大学に行くには、早くても6時間。長旅だ。よくこんな時間をかけて試験を受けたな…と数年前の自分に感…

手紙

三つ子の魂百まで、好きなものを思い浮かべればだいたい、幼少期の趣味に還元される。 久しぶりにポケモンのダイパシリーズのBGMを聴いていたのだけど、私がソウルやR&Bに関心を持ったのって、ダイパの音楽が大きい気がする。 216ばんどうろ、228ばんどうろ…

くもり

青空のような曇天。 修論のプレッシャーで、毎日歯軋りしているらしい。おかげで歯がじんわり痛む。さいきん歯科医に行って異常がなかったから、虫歯ということはないだろう。数ヶ月前にレントゲンをとったら歯軋りの傾向があると言われて、痛みが増すようだ…

歩く人

この曲を聴けば世界がまるきり変わってしまう。 そんな感覚を失ってきている。この音楽を聴けば無敵。どこかで聞いたことのある文句、というか広告代理店が好きそうな構え方だが、音楽で心を躍らせる感覚を失せている。修士論文、就職がものすごく恐ろしい。…

すこやかな12月 / 2023の音楽と景色

論文執筆で命を削っている。 修論の文字数が10万字を越えた。 中間発表の資料をうまく繋ぎ合わせているので、一から書き進めているところは少ない。とはいっても、時間との闘いに焦燥を感じざるを得ない。11月はずっと体調が悪かった…。博士課程に進んでいた…

大学で得たもの 救いたいもの

大学で得たものを一つ選んで答えよ、と訊かれたら、こう答えるだろう。 ひとが書いたものに寄り添って議論しようとする姿勢、だ。成功しているかはともかくとして、議論の姿勢はこの6年間で身についたと思う。 英語圏ではprinciple of charity (思いやりの…

衒いのなさ

クリスマス・シーズンが近づく。サンタクロースに手紙を書くようにして、ほしいものを考える。ほしいものはなに?わたしは、衒いのなさがほしい。ないものがほしいって、へんだね。確かにへんだね。 針葉樹が屹立する庭園 一度衒ってしまうと、もう元には戻…

逍遥と越境のエッセイ

雨上がりにうんと晴れた日。雨の上がったあとがいちばん空気が澄む。太陽を照射する湖面もよかった。ここ一番のきらめきだった。 ようやく風邪も治って、外を逍遥するとなると、歩く意味をずっも考えている。修論のストレスを解消するために、お気に入りのケ…

最後の一葉

ここ数日、風邪で外界との接続をほぼ断絶した状態にあった。予定キャンセルしたみなさま、大変ご迷惑をおかけしました。 喉の痛みから始まり、副鼻腔炎、咳…という典型的な風邪を引いたのは久しぶり。たいてい、軽い鼻炎で終わるから。鼻が弱いので半年に一…

悪夢絵巻

さいきんの様子?めちゃめちゃめちゃめちゃ不安!修論が書き終わるかわからない。人からどう思われるかわからない。でも、それは生命を脅かすほどでもないし、別に相談して解決するわけじゃないし、一過性のものだから、どうでもいいのだけど、でも局所的な…

悪意の仮面

少し前に書いた記事に、「森は生きている」というタイトルをつけた。これはマルシャークの有名な戯曲からとった。私自身も、小学校の学芸会のときに演じた。ストーリーラインはシンデレラに似ている。いじわるな継母役に立候補し、娘の得た金貨を持ち去る継…

落ち葉の行き場

散った金木犀の香りは旬の過ぎた蜜柑に似ている。金木犀の断末魔のような、甘い香りに出くわす。甘いんだけど、なんかくどいというか、独自のえぐみを持っている。これは、冬の終わりの蜜柑のようだと思う。回想に残存する香り。旬の過ぎた匂い。こうしたも…

こぼしの小法師

今週のお題「こぼしたもの」 … Spilt milk と題した短編を書いたことがある。こぼれた牛乳のように、収集がつかなかった試みなのだが、私の心にはいつもspilt milkがある。言うまでもないが、There is no use crying over spilt milk(覆水盆に返らず)の諺…

好きのテリトリー

人に優しくしたいという欲求は、時としてエゴイスティックな感情に由来する。少なくとも私は。 久しぶりに、他の人に対してややキツめのことを言ってしまい、自己嫌悪に陥る。同時に、ここでなあなあにしてはいけない、という気持ちもあり、消化しきれない思…

森は生きている 北海道旅行記 完結編

北海道旅行記録を放置しているのは、ひとえに修論に追われてるからだ。夏は心の調子があまり良くなくて、思考もままならない状態だった。気温が下がった途端、文字が頭に入るようになり、筆が進む。金木犀の季節はいつも心が穏やかだ。秋と冬が大好き。 発表…

樅木のメタモルフォーゼ 道東旅行記②

暗闇の効用について考える。何かの記事で、暗闇での逍遥が、自然への畏怖を蘇らせると書いてあった。本当にその通りである。 北海道旅行の締めは、恐怖の暗闇峠越えであった。車の後ろには、一面の闇が広がる。街灯はない。釧路から札幌へと向かう旅路は、闇…

2023/10/3 目標宣言の随想

ブルーシールアイスを食べた。アイスではない何か、でもとても美味しかった。もちろん沖縄に行ったわけではなく、内定式に伴い数百キロを移動したのだ。 内定式を終え、無事に帰る。式典が終わったことに安堵しつつ、わたしの学生生活を終結に向かわせる必要…

10月初旬

わたしは中央値からけっこう外れてることが多い。性格診断の結果をみたら、わたしは明らかに中央値から外れている!小学生から感じていたコンプレックスが蘇ってきた。 旅行記を書き進めたいのに、書き進められない。書きたいことは山ほどある。 何かと移動…

ちょっと話を聞いて

緑色のカメムシの香りがしてたまらなくなりそうだ。金木犀の香りも届いていないというのに!去年の今頃は大学構内に金木犀の香りがうっすらと香っていたはずである。近くにいた二人組が「金木犀はどこ?」と探していた記憶がある。今年は、そんな気配もなく…

針葉樹、畑、丘  道東旅行記①

知床を訪れた。記憶を手繰り寄せるも、楽しかった瞬間が断片的に立ち現れるので収拾がつかない。旅行記が書ける人はすごい。書けない。でも、書こう。 国立公園を歩きたかった。車の運転ができる友人のおかげで、自然散策をしている。作家の梨木香歩さんのよ…

wanderlust

僕が旅に出ない理由はだいたい百個くらいあって〜♪と替え歌してしまうほど、内向きの人間なのに出歩かないと塞ぎ込んでしまう性分である。外に出ない言い訳を百個くらい並べては引きこもっている。それでも友人たちが旅行に誘ってくれるので、外に出ることが…