Naegi

逍遥

ちょっと話を聞いて

緑色のカメムシの香りがしてたまらなくなりそうだ。金木犀の香りも届いていないというのに!去年の今頃は大学構内に金木犀の香りがうっすらと香っていたはずである。近くにいた二人組が「金木犀はどこ?」と探していた記憶がある。今年は、そんな気配もなく酷暑が続く。9月は麗しい季節だと勝手に思っていたのだが、わたしの片思いに終わることになりそうだ。次は10月。

 

おのれカメムシめ…とカメムシに大きな感情を抱くことになるとは思いもしなかった。カメムシが大量発生しているらしい。道を歩くと街頭や家の外壁に集まる緑色の何かを確認する。見なかったことにしよう。

 

さて、道東旅行記を書こうかと思ったが、今日はそんな気力がなさそう。個人的にちょっぴりしんどい出来事があり、その気持ちを宥めるのに時間を費やしたい。

 

わたしは理想がめちゃくちゃ高い。理想、というと恋愛の文脈において使われる傾向があるが、総合的な話としての、理想。たぶん、こだわりと表現されることが多いのだろうが、わたしは理想を求めすぎている。たしかに心理テストでは理想を追求する人間と出ていた。

 

あー、わたしは下手すると自我通り、モラハラになるのか?と思う時がある。こだわりをモラルにすり替えて他人に共用すればハラスメントだ!ただ、わたしには譲れないものが数多くある。

 

そのうちの一つが他者との境界である。まず、物理的に距離が近い人は苦手だし、よほど気の合う相手でなければパーソナルな話を開けっぴろげにしない。インターネットは別。もちろん。

 

今日はその境界線をすこし超えた集まりがあり、居心地の悪さを覚えた。わたしは対話がしたいと思って参加したのに、なんか偉い人の話をずっとニコニコして聞いていた。

 

いわゆる社会とはそんなところなのであろう。(来年の勤務先の話ではないことを断っておきます!!!!!!)

 

Twitterにおける男女論に辟易していたが、面白くない集まりではTwitter男女論にみたいな話が延々と続く。ステレオタイプに対する疑いはないのか?女という属性だけで人に意見を求めんな、とかいろいろ言いたいことがあったので、めんどくさくなって顔を作るのもやめていた気がする。

 

大人しくニコニコして、傾聴する力は確かに、今後の生活において求められるのだろう。ただ、私には完全に成り切ることは無理だ…と思う。儀礼的な無関心ならぬ礼儀?なるものは身につけたいが、それ以上の会話はできない。わたしの境界線を易々と通り越すようならコミュケーションに対する不安が残る。 

 

と、愚痴っぽくなったので良い話をしよう。

来年も北海道を訪れるようである。北海道が大好きなので、しばらくは物産展で誤魔化そうと思う。針葉樹林の大地に、もう一度行ける。幸せだ。

 

あと、梨木香歩さんのサイン本を入手した。わたしがいま、必死になって針葉樹林の話をしているのも、梨木香歩さんのおかげ。文章を書こうと思ったのも、梨木さんのおかげ。いまの研究対象に関心を寄せたのも梨木さんの『からくりからくさ』を読んでから…。わたしの人生は梨木香歩さんによって形成された部分も大きく、かつて某メディアで梨木香歩さんの本についてエッセイを書いた!(し、反響も大きかったので嬉しかった……)

 

 

そんな梨木さんのサイン本が手に入るとは感慨深い。確かに、梨木さんは同じ世界に生きているのだ…と実感する。

 

教科書に載っていた『ブラッキーの話』って、わたしの原動力になっている。あれを読んでから小説やエッセイを書き始めたのだ。巻末に梨木さんのエッセイがあり、たしか言霊の効用について書いたものだった気がするが、ことばそのものに関心を持ったのも以降のこと。梨木さんのおかげで、人文学の豊かな世界を知ったのだ。

 

嬉しい。

 

 

そういえば、他人に対して何を求める?の話が出たが「いわば、わたしの生態系を崩さない人」「同じ世界に生きてくれる人」と言ったけれど、ある程度掻き乱して欲しいなという気持ちがあるから、難しい。わたしはわたしで、わかってほしいの祈りを捧げ、文章を書いているが、どうもecho chamberから抜け出せない感がある。全然考え方の異なる友人たちと時間を過ごしたことで、路頭に迷っていた状況はもはや過去のことになった。つまり、わたしの持つ「生態系」のような思考の網は、ある程度崩れた方がいい。どうせ戻るから。レジリエンスさえあれば、ある程度の「崩し」は必要なのだ。

 

わたしは働くということに全く絶望していない。まだフルタイムで働いたことのない学生の戯言かもしれないが、閉鎖的な環境でひたすら1人で研究している身だとecho chamber 現象がひどい。風穴をあけようにもSNSは延々とecho chamberだから。全く違う角度からの話をききたい。

 

だから、今日のような会合に行ったのだが、やっぱり許容範囲はあるのだと知る。思考の渦から逃がしてくれる友人には感謝してもし足りないくらいだ。いつも、ありがとう。

 

とりあえず好きな本と好きな音楽を聞いて体力回復させます…私がしっかり生態系を保つためには、自分の世界に没頭する何かが必要…その一つが文章を書くことなのです…文章くらいいいでしょ?ちょっと話を聞いて?