Naegi

逍遥

トートバッグ・コンプレックス

わたしは心配性だから、トートバッグを持って出掛けられない。ファスナーがついていない鞄を持ち運びするのは心もとないのである。 

 

外出先で、トートバッグを持ち運びする人を見て、いつもひやりとする。特に人混みの中だと。

これででは、簡単に財布が盗まれてしまうのでは、とわたしは不安になる。

 

斜めがけしたショルダーバッグでさえ心配なのだから、トートバッグならなおさらである。

 

でも、わたしはトートバッグが好き。

プレーンでカジュアルな服にトートバッグが馴染むから。

 

この葛藤を乗り越えるために、自分をもっと信用した方がいいのかもしれない。

 

うっすいサコッシュに貴重品を入れ、それ以外はトートバッグ。そんなスタイルで闊歩するのも悪くないだろう。

 

 

クローゼットを夏の装いに変えた。

掘り返してみれば、わたしは3年前からあまり服を増やしていないようだった。

箪笥の肥やしになっている服もたくさん。

 

いまのわたしが着るはずのない、フリルやレースがに使われた服を見て、少し懐かしくなった。

 

外出する決め手となる服を持ち合わせていなかったので、最近は遠出を渋っていたし、親しい友人と会う日でもそれほど見た目を気にかけることはなかった。それがあって、ここのところは社交の場になかなか行きたいとは思えなかったし、趣味のイベントにも行けなかった。

 

久しぶりに服を買った。

すぐ着れなくなるようなものではなく、何年も着れるようなサスティナブルなものを選んだつもり。

これで、ようやく外に向かえるようになった。

 

これから抱える多くの締め切りの合間に、好きなところにお出かけしようと思う。トートバッグを持ち歩きながら。