Naegi

逍遥

えんりょのかたまり

母親とはぐれた推定5歳の男の子が大泣きしていているのを見て、私も泣きそうになった。

 

すぐに母親と再会を果たしていたので私も安心した。明らかに所得の高そうな家に住んでそうな母親だった。

「もう大丈夫よ」

母親が声をかけると、男の子は顔をゆがませ、泣くのを止めようとする。

 

いいな、母親の「大丈夫よ」で全てが大丈夫になる世界って、と羨んでしまった。

 

この1ヶ月で、またもやこの世の中は不安が吹き荒れてしまった。いつの間にか、私の住む都市はウイルスの蔓延する都市となってしまった。

 

この時期に帰省したところで、「感染の進む地域から帰った人間」というラベルが貼られることに違いないし、不安になりながらの帰省は割に合わないだろう、と思い帰省を断念した。

 

本当だったら、帰省してのんびりして、また5月にはたくさん楽しいイベントがあって…

 

5月は楽しい月になるはず、と思いながらこの4月を生きてきたのだが予定はほとんど崩れてしまった。

 

思い出すのは1年前。

全てのイベントが延期または中止され、留学も辞退することになった。

 

初夏の空気が苦手なのは、去年のこの時期を思い出すからだろう。

 

虫が鳴き出したのを聞き、初夏の到来を知る。

今年もそんな年になってしまう…思うと本当に悲しい。

 

精神安定剤のような音楽を聴き、好きなドラマを観る。これが私の「大丈夫よ」なのかもしれない。