Naegi

逍遥

0518 終焉の躑躅

暑い。初夏の嫌な暑さの中、オフィス街を歩く。だいたい、リクルートスーツは夏に適さない。帰宅後、Tシャツに着替えたら、その優しさに救われてしまった。コットンのTシャツはとても優しい。リクルートスーツのジャケットはキツめにしましょう、とスーツ店の店員に言われた。着物を思い出す。

 

御社が第一志望です!といえば、まぁ、どこの会社にもそう言っているよね…と笑われる。まぁ、この質問をされればそう返さざるを得ないだろし、相手もわかっている。それでも、内定辞退をなるべく避けるために、質問せざるを得ないのだろう。

 

遠回しに、論文の進捗をうむようにいわれたので、早速書き始めた。2月ごろから就活一本に絞ったので、それなりにブランクがある。わたしの院生生活とはなんだろう。それでも書きたい内容は山ほどあるので、深夜の集中できる時間帯に一気に書き上げたい。わたしの論文執筆スタイルは、我を忘れるように集中し、どうにかするのである。おそらく積み重ねではない。一気に仕上げるのだ。細かい調べものを積み重ねるとある時、執筆のスイッチが入る。学部生から今まで、ずっとこのスタイルだから、仕事における日々の積み重ね方法はわからない。

 

久しぶりに研究室の人たちと会う。わたしが就活に夢中になっている(語弊があるかもしれないが)間、後輩に対してじゅうぶんな情報提供ができていないことに気づいた。誰かが後輩に情報を渡さない限り、一向に終わりの見えない課題が待っている。

ステマチックにノウハウ提供ができればいいのだが、どうしても先輩学生のリソースに依存してしまう。去年まではそれなりに上手くやってきた気がするが、さすがに就活が忙しいと立ち回らない。すまない。でも来年からわたしはいない。どうにかならないものか。

 

研究はコンサルの提案内容にかなり似ている、との話があった。もちろん、コンサル業務では提案相手を意識してアウトプットを提示しなければならない点で、研究とは大別されるだろうが、意外に研究とビジネスでの提案は似ている。たぶん、通底するロジックは同じ。

 

こと人文学はなにかと憂き目を見ることが多い学問だが、人文学で培った能力は案外、ビジネスでも応用できる。直接かかわるものだけが、ビジネスで活かされるわけではない。物事はあずかり知らぬところで繋がっている。面接で、研究のことについて一蹴されてしまうこともある。たしかに個別の話は転用できないだろうが、その研究のサイクルの回し方は、おそらく仕事でも生きるのだろう。それぞれの分野の方法論を学びながら、わたしも人文学で培った物事の考え方を他分野に転用したい。

 

複数の理由から、コンサルタントという道は選ばなかったけれど、ほかにもフィールドはあるはず。わたしが大学で学んできたものを今後、じっくり社会で使っていきたい。これは結構、本気で思っている。

 

そろそろ躑躅の季節も終わる。春は終わる。自己と向き合ったあの春が終わり、心の底から安堵している。いろいろあって、かなり苦しかった春をうまく消化できた。今度は、初夏の熱気を乗りこなすこと。これが目下の課題である。