Naegi

本を読み、書いています

2020-04-07

図書館で借りた本から、2020-04-07と印字された貸出表が落ちてきた。2年前、見知らぬ誰かがこの本を借りていたのである。

 

ああ、と思う。

この日は図書館が開館していた最後の日で、ここから1ヶ月以上の閉館を強いられることになる

この日の夜に緊急事態宣言が発令され、あらゆるものがストップした。アルバイトもなくなった。大学も原則立ち入り禁止になった。

大学付近に建てられた看板は異様な雰囲気を醸し出していた。まるで事件現場のような雰囲気であった。

 

貸出表には、エドワード・サイードの『オリエンタリズム』上下巻、(題名は失念したが)カミュのペストの解説本の題名が記載されていた。

 

図書館が閉まる直前にこれらの本を選ぶなんて。

なんという直感。

 

そして、2020/04/07という日付を既に遠い過去としてみなしている自分に驚く。

 

それもそのはずというか、生活の動きがコロナ前の水準に戻り、会いたい人に会える生活になった。

毎日が再会の連続。断絶があったからこそ、幸せなのかもしれない。改めて自分のバイタリティにも驚いたし(忙しい方が性に合っている)、人間関係の豊かさにも感謝している。ここ2年は孤独に苛まれていたのに。未来がどうなるかなんてわからないのである。

 

ちょうどあの頃は毎日のように友人と通話し、環境を話していた。就活がどう?とか。ガクチカってなに?サマーインターンはどれくらいだせばいい?とかね。

あの頃は本当に迷っていた。

留学はたぶん無理だし、かといって就活に切り替えられるには大学への未練がありすぎた。でも、研究に没頭できる自信はなかった。文系院生なんてありえない、と当時は思い込んでいた。

 

ちょっとだけ、興味があることはあったから、友人とLINE通話しながら手元にある文庫本を読み、調査もどきを進めていた。奇しくもそれが私の今の研究テーマである。ああ、いわゆる理解のある彼くんとの結婚した話、みたいなエピソードである。でも、この研究テーマが私を救ってくれたのは否定できない。もしかして、これが私にとっての「理解のある彼クン」???(この種のアナロジーは良くないなと自戒をこめて)もしかしたら、これ、わたしのライフワークになるかもしれないし…。

 

絶賛就活中なのだけど、やっぱり院行ってよかったよ!ってあの頃の私に言ってあげたい。大学への未練は少なくともあの頃より断然少ないし、研究によってあの頃よりも自己肯定感は強くなった。研究室の先輩・同期・後輩、先生は私の研究を認めてくれるし、人としてもリスペクトをもって接してくれる。非常に息がしやすい場所である。

 

とある先輩に、「授業の時と飲み会の時のキャラの違いにびっくりしたわ!〇〇さんはたくさん引き出しがある人でいいね」と言われた。意外性のある人柄がいいね、という褒め言葉は私にとって最も嬉しい類のものである。

 

そう。いまの生活には健やかさがある。

過去を嘆くこともなければ、地元への恨み節を展開することもなくなった。脆い自負心は取っ払われ、肯定感が根を張ってきた。これからが勝負といったところか。

 

たしかに個別の辛いこと / めんどくさい事は山ほどあるが、全体として上を向いている。いいね、この生活。

 

2020/04/07から始まった、自分との不毛な戦いにようやく終止符が打たれたような気がした。

 

私は自信を持って、今の生活と人生を愛していると宣言できる。

 

ふと目に入った図書館の貸出表が、月日と自己意識の変遷を思い出させてくれた。そんな1日だった。